2012年02月25日の記事

2012年2月25日(土) 20:21

考現学

パナソニック汐留ミュージアムで開催されている”今和次郎(こん・わじろう)採集講義”に行って来ました。



考古学に対する”考現学”というジャンルを創った建築家(1888〜1973)です。

日本全国、韓国、中国までにおよぶ民家の詳細な研究に始まり、関東大震災で復興に立上がる一般の人々が廃材で作り上げるバラックの家、店などの調査・記録。
そして都市の市民の”生活”に密着した街の中での観察・採集・記録。

ここで全てに登場するのが、詳細かつ精密な無数の手描きスケッチです。

 
  

スケッチの巧さ、細やかさはもちろんですが、何よりも魅かれるのが、その視点。

その時代、その時間の日本の市井の暮らしぶりを統括的に上から括るのではなく、ある一部の側面から、それも超ピンポイントで広範囲にわたり(洋服の色・柄・長さ、ヘアースタイルの種類と傾向、ひげのカタチ・長さ、手提げの持ち方、新婚家庭の持ち物調べ、食堂の茶碗の割れ方、はたまた昼休みベンチで寝ている人たちの姿の調査まで!)、つぶさに観察・採集・記録し、それらを集めることで、よりリアルに生活全体を見ることができるという逆転の発想のユニークさ。

90年近く経った今でも、その視点は古臭くなく、文化資料としても一級品です。

今氏の凄いところは、現代のTVや出版業界の主流である、街の中の面白いモノ、おかしなモノ、流行モノ、ぶら散歩モノなどの基本概念を1920年代に体現していたこと。

その頭の柔らかさには脱帽です。

マスコミュニケーション、の日本語訳は大衆伝達。まさに”考現学”です。

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いつも思うのですが、パナソニック汐留ミュージアムの展示センスは素晴しいです。
先回の白井晟一展もそうだったのですが、展示品数はかなり多いのに、
飽きさせない変化と工夫が満載です。

ついじっくり、ゆっくり観てしまいます。おススメです。

written by hom [放浪] [この記事のURL] [コメントを書く] [コメント(0)] [TB(0)]

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