12月10日中日新聞の”中日春秋”には思わず唸りました。
ノーベル物理学賞を受賞された益川氏が現在の学校教育の悪しき点として、試験の選択式が多いことをあげられているそうです。
一から答えを紡ぎだすことをしないことで、「考えない人間を一生懸命つくっている」と。
それを筆者は教育界への「手っ取り早さへの警告」という言葉で結んでいます。
うーん、です。
建築界にも、その「手っ取り早さ」が浸透してきています。
本来建築(特に住宅)は、昔であれば、ダンナとお抱えの職人、現在ならば施主と設計者、という関係の中で、ダンナや施主の要望するモノを、職人や設計者がプロとしての意見を織り交ぜながら、時間をかけてじっくりと自分たちだけの答えを導き出していくのが理想、のはず。
しかし今の風潮は、パンフレットや展示場などの出来上がった空間の中から
自分に合うものを選ぶ、というまさに選択式。
もちろん背中合わせの考えとして、合理的、ということも言えると思います。
けれど、本当に高いお金を払い、なのに出来上がったら簡単にやり直しのきかない建築という業態に関しては、どんなに時代に逆行していると言われようとも僕は、自分の暮らし方、自分の趣味・嗜好の表現方法、はたまた自分の生き方にまで踏み込んで、一から考えに考え抜いてひとつの答えを紡ぎだしていくべきだ、派です。
「手っ取り早く」、「合理的」な考えは、機械的なモノにはなじみますが、人間の考え、感覚的なところに入り込むと、いろいろ弊害を生じます。