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2013年11月19日(火) 22:23

天空の白鷺

ブラHOM、今回は姫路。

姫路城の平成の大修理が5年前から行われていました。
あの大きなお城ごと全部すっぽりと、仮設の建物で覆い隠し、
完全に室内状態にしての大修理です。

その最上部の屋根の葺き替えや、漆喰の白壁の塗り替え施工現場を、
その仮設の足場から間近に見ることができる”天空の白鷺”という期間限定の施設。
コレは見ておかねばっ!と行って来ました。

  

 



今後決して見ることのできない視点での白鷺城は感激モノでした。


外敵からの攻撃に対し防御するための工夫は、城郭建築の基本であり目的な訳ですが、そんな工夫のひとつに”狭間<さま>”があります。

土塀などに長方形、正方形、三角形、丸形の孔をくりぬき、下から攻め上がってくる敵に向けて、矢や鉄砲を差し込んで攻撃するためのもの。
その攻撃道具の種類によって孔の形が違っています。
長方形は矢(矢狭間)、その他の形は鉄砲(鉄砲狭間)です。
姫路城に合ったのはこんな感じ。



ここには矢狭間は無いようですが、この鉄砲狭間の形、配置は、まるでデザイン的な遊び心があるようで楽しささえ感じてしまいますよね!?

機能だけ考えれば正方形だけで良いと思うんですが・・・
三角、丸を作った理由は何なんでしょうか?

やはり、遊び?デザイン?・・緊迫の戦場に一服の清涼感みたいな・・・?

その時代背景の中でそんな感性があったとしたら楽しいですね。

【補足ウンチク】
孔を覗いてみると、手前から外に向けて口径が小さくなっています。

 

これは”アガキ”という技法で、敵の攻撃から身を守りながら自分の視界を広げる工夫ですが、これもまたデザイン的に素敵です。

実はHOMも狭間からヒントを得た訳ではないのですが、光を効率的に取り入れようとデザイン的に使っています。
こんな感じで・・

 

まったく機能目的は違うのに、時代を超えて何となくの繋がり・・楽しいです。

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2013年2月26日(火) 23:23

出世階段!

都市放浪ブラHOM2013第1回目は東京。
今回はいつもにも増して、かなりマニアックに地形を楽しんで来ました。
そのマニアックさも含めてご紹介^^

所用で虎ノ門にあるホテルオークラへ。



地理的にここは、関東ローム層と呼ばれる、火山灰が堆積し風化して出来上がった
武蔵野台地の末端、麻布台にあり、東京山の手エリアの末端部分でもあります。

東京山の手(ざっくり言えば、現在の山手線より東側の標高の高い部分)は、
大きく7つの台地があり、その合間に6本の川が流れていると言う地形です。

その川の浸食作用と、透水性が高く崩れやすい関東ローム層の性質が重なって、無数の断崖と谷が形成され、リアス式海岸のように台地と谷が連続して入り組んだ地形になっています。
そしてそこに人が集まり街が作り上げられてきたため、必然的に多くの坂や階段が作られてきました。

その基本は江戸時代、山の手はほとんど全国300藩の大名屋敷で埋め尽くされ、その広大な区割りはその周囲の道も含め、かなりの部分が現在にそのまま引き継がれています。

ホテルオークラの敷地もご多分に洩れず江戸時代川越藩松平大和守の敷地跡。
敷地形状も取り囲む道もそのまんまです。

その取り囲む道が全て坂。坂フェチにはたまらない地形です^^
汐見坂、江戸見坂、霊南坂、その名前もそのまんま。


 汐見坂/江戸見坂

霊南坂

汐見坂、江戸見坂はネーミングわかりやすいですよね。
江戸時代にはこの坂から下町市街全域から遠くは江戸湊(みなと)<=東京湾>まで一望できたようです。
何となく不気味な”霊”南坂ですが、コレは昔ここにあったお寺の”嶺”南和尚からとったんですが、いつの間にやら霊南に変わっただけの話だそうです。
三浦友和・百恵夫婦が結婚式を挙げられた霊南坂教会で有名ですね。

ホテルオークラの建つ丘を降りると、谷を挟んで東側に愛宕山という丘があり、
山上に愛宕神社が建っています。

そのお社に参拝するために標高26Mを上らなければならないのですが、
そのルートのひとつ、踏面32cm、蹴上22cm、86段!踊場無し!
で一気に上る愛宕男坂(江戸期では階段は”坂”の範疇)へ。

その昔の逸話から”出世の階段”と呼ばれています。

  



それはそれは怖い階段、建築基準法上はNGです^^
しかし、何とか出世したいので、2往復半!


ブラHOM都市放浪は鍛えられます!


気の弱い方は隣にある愛宕女坂へ




***************
<大名屋敷ミニ話>

六本木ヒルズも、東京ミッドタウンも、赤坂サカスも、何で都心にあれだけの広大な土地が ・・?っていうのは全部元は大名屋敷。
軍用地になったり、細分化され学校や民間企業の手に渡ったり、時代とともに様々な使われ方はしてきたんですが、バブル時代の大規模再開発ブームの波の乗り、その大きな区割りはそのままに出来上がったのが今の姿です。

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2012年12月30日(日) 23:30

都市放浪(ブラHOM)2012

年末、冷たい雨そぼ降る中、久しぶりのブラHOMしてきました。

目的は、東京で大学生活を送っている息子の視察(TATEMAE)、
情報収集と言う名目の都市放浪(HONNE

東京と言う街が形成されている地形は、多摩川の扇状地である武蔵野台地が、長年の風化侵食により、大小、浅深の谷が複雑に入り組まれた場所。その台地と谷の高低差はおよそ15〜20mあり、必然的に東京は坂道や階段がとても多い街になっています。

坂道や階段は、街の風景に物理的にも心象的にも楽しい変化をもたらし、ブラHOMの大きな魅力のひとつになっています。

・・何が?・・・と言われると言葉に詰まりますが、
上っていく時に感じる高揚感、期待感。
上りきって振り返った時の達成感、開放感。
えっ!?こんなところに?!という意外性。
ノスタルジックな路地感?・・みたいなものでしょうか?

その無数にある坂道・階段の多くに(23区内だけで600弱)、その地形の特徴や歴史的な背景を元に名前が付けられています。
そのあたりのウンチクも楽しみのひとつでもあります。

で、今回歩いてきたのが・・・

 湯島天神男坂 湯島天神女坂
 湯島実盛(さねもり)坂
 無縁坂
谷中夕やけだんだん

東京の道路の骨格は江戸期に形成され、現在でもその名残りはほとんど残っています。江戸期においては階段も坂の範疇だったため、階段であっても”坂”が使われています。
”男坂”、”女坂”は1セットで存在し、一直線に急角度で上りきるのが”男坂”、途中踊り場を経由して、緩く、楽に上るのが”女坂”。
今の時代、イメージは逆のような気もしますが!?

こんな本たちがあるんです!     ウンチク満載です。

最後は復原完成した東京駅丸の内駅舎の夜景で締め!

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2012年2月25日(土) 20:21

考現学

パナソニック汐留ミュージアムで開催されている”今和次郎(こん・わじろう)採集講義”に行って来ました。



考古学に対する”考現学”というジャンルを創った建築家(1888〜1973)です。

日本全国、韓国、中国までにおよぶ民家の詳細な研究に始まり、関東大震災で復興に立上がる一般の人々が廃材で作り上げるバラックの家、店などの調査・記録。
そして都市の市民の”生活”に密着した街の中での観察・採集・記録。

ここで全てに登場するのが、詳細かつ精密な無数の手描きスケッチです。

 
  

スケッチの巧さ、細やかさはもちろんですが、何よりも魅かれるのが、その視点。

その時代、その時間の日本の市井の暮らしぶりを統括的に上から括るのではなく、ある一部の側面から、それも超ピンポイントで広範囲にわたり(洋服の色・柄・長さ、ヘアースタイルの種類と傾向、ひげのカタチ・長さ、手提げの持ち方、新婚家庭の持ち物調べ、食堂の茶碗の割れ方、はたまた昼休みベンチで寝ている人たちの姿の調査まで!)、つぶさに観察・採集・記録し、それらを集めることで、よりリアルに生活全体を見ることができるという逆転の発想のユニークさ。

90年近く経った今でも、その視点は古臭くなく、文化資料としても一級品です。

今氏の凄いところは、現代のTVや出版業界の主流である、街の中の面白いモノ、おかしなモノ、流行モノ、ぶら散歩モノなどの基本概念を1920年代に体現していたこと。

その頭の柔らかさには脱帽です。

マスコミュニケーション、の日本語訳は大衆伝達。まさに”考現学”です。

************

いつも思うのですが、パナソニック汐留ミュージアムの展示センスは素晴しいです。
先回の白井晟一展もそうだったのですが、展示品数はかなり多いのに、
飽きさせない変化と工夫が満載です。

ついじっくり、ゆっくり観てしまいます。おススメです。

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2011年12月2日(金) 16:51

小春日和・2011末

季節はずれに暖かい晩秋の1日、久しぶりの東京ブラHOMしてきました。

建前は、調査・研究、情報収集。

本音は現実逃避の意味合いが強い刺激を求めての放浪の旅。

相変わらずの不良中年です


まず東京駅丸の内駅舎復原工事現場。



南北ドーム屋根を含めた復原部分はほぼ出来上がっているように見え、地下部分と内装工事が佳境の様子でした。

この場所で、この規模で、この難工事。
行く度、見る度に日本のゼネコンの素晴しさに拍手です。

来年6月の完成が楽しみです。


次に向かったのが・・・

信用金庫という地元密着型企業が一躍全国に名を知らしめることになった建物へ。

 巣鴨信用金庫志村支店

フランス人女性デザイナーによるこの建物、幹線道路沿いとはいえ、地味な東京下町の街並みに輝きを放ちながらキレイに納まっていました。
色、カタチなど少しバブリーな感じがしないではないですが、色遣い、ボリューム感などのデザインセンスが絶妙で、街の品格を上げるほど上品に佇んでいます。


近くにも同信金常盤台支店



同じデザイナーによる建物。感覚も同じく、東京特有の雑多な住宅街の中でひときわ目立ちながらも溶け込んでいます。
ル・コルビュジェのロンシャンの教会(下の2枚の写真)の窓をモチーフにしたファサードデザインですが、ここにも色遣い、バランスなどにデザインセンスが伺えます。

 

余談ですが、実はHOMもやってます。 ⇒CakeFactory, ⇒お洒落な物置


巣鴨信金の2つの建物の共通コンセプトが「また来たくなる信用金庫」。
完成以来集客数、来客数、滞在時間など結果が出ているそうです。

素晴しいですね。



その後も果てしなく歩き続け、ブラHOMどころか、フラフラHOMになりつつ、
しっかりと刺激を吸収し、現実に戻ってまいりました 

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MySketch 2.7.4 written by 夕雨